【見どころ】充実の3階級制覇王者が今回も圧勝か!?

10月7日(日)横浜アリーナ
WBA世界バンタム級タイトルマッチ
王者 井上尚弥(大橋) vs ファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ)元WBA王者

 今年5月、ロングラン王者のジェイミー・マクドネル(英)を初回で撃沈して3階級制覇を成し遂げた井上の初防衛戦。ラフで狡猾な戦いぶりに定評のある元王者パヤノを相手に本領を発揮することができるか。この試合は階級最強を決めるトーナメントといってもいい「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」のバンタム級準々決勝でもある。

 井上はマクドネル戦では力みからラフな攻撃が目立ったが、いつもは左ジャブから差し込んで距離やタイミングを計ったうえで上下のコンビネーションで攻め込むことが多い。秀でたスピードと群を抜くパンチ力だけでなく、相手の戦力や戦況を読む頭脳も持ち合わせており、階級を上げたことで安定したコンディションをつくることもできるようになった。プロキャリアは6年、11の世界戦(全勝10KO)を含め総試合数は16(全勝14KO)に増え、アメリカで防衛戦を行うなど経験値も大きくアップしてきた。WBSS参戦によってモチベーションも一層高くなり、慢心が入り込む余地はなさそうだ。現時点では死角は見当たらない。

 パヤノは04年アテネ大会、08年北京大会と2度の五輪出場経験を持ち、さらに05年と09年の世界選手権にも出場するなど輝かしいアマチュア実績を持つ。8年前にプロ転向後も歩みは比較的順調で、ここまで21戦20勝(9KO)1敗の戦績を残している。14年9月には、WBA世界バンタム級王座を12度防衛していた技巧派のアンセルモ・モレノ(パナマ)を乱戦に巻き込んで6回負傷判定で破り、世界一の座に駆け上った。初防衛戦では五輪3度出場の実績を持つラウシー・ウォーレン(米)を泥仕合のすえ下したが、再戦で惜敗した。これがプロで唯一の敗北だ。以後は3連勝(1KO)を収めている。スタイルは「サウスポーのボクサーファイター型」というカテゴリーに入るが、文字どおり頭をつかった攻撃は雑で、相手にとっては厄介なタイプといえる。井上は「技術を兼ね備え、そのなかでラフファイトもしてくる。前後の出入りがあるので、そのあたりが面倒かも」と分析している。

 25対1というオッズが出ているように、井上有利は絶対的なものといえよう。最近の数戦と同様、相手に何もさせずに前半で仕留めてしまう可能性も十分にある。総合的な戦力にはそれほどの差があるといっていい。その一方、パヤノのラフ戦法に巻き込まれ、井上が序盤で顔面カットや出血というアクシデントに見舞われるなど未体験ゾーンに引きずり込まれる危険性があることも頭の隅に置いておきたい。(原功)

井上=1993年4月10日、神奈川県出身の25歳。大橋ジム所属。右ボクサーファイター型。戦績:16戦全勝(14KO)。

パヤノ=1984年4月12日、ドミニカ共和国出身の34歳。左ボクサーファイター型。戦績:21戦20勝(9KO)1敗。

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